●ステアリングセンターアームの修理

 SJ10とSJ20の装備の違いの一つであるセンターアーム。SJ10のゴムブッシュ支持に対してSJ20ではメタルブッシュによるリジットな支持となっています。これについては海外輸出を念頭に置いた設定であると思われ、路外走行率が日本に比べて圧倒的に高いことからSJ10の緩衝効果は高いものの耐久性に乏しいゴム支持やベアリング支持における破損を懸念して、万一整備不良による不具合が出たとしても基本的には耐久性の高い金属ブッシュ支持という方法を採っているのではないかと思います。
 よってSJ20で標準装備されるステアリングダンパーはリジットな支持によるキックバック抑制とゴムブッシュから失われたダンピングの為で、クロスカントリー走行でのキックバック対策というよりは海外での一般的な使用における効果を狙ったものではないでしょうか。
 妄想はさておき、千切れると困ってしまうSJ10の物よりは耐久性の高いものですが、逆に整備に無頓着になりがちでもあります。この支持方法となっていることにより、定期的な分解整備を怠ると当然不具合が出てきます。今回は少なくとも当方の手元で10年は熟成させたアームを分解整備する事にしました。


 一見、ベアリングのオイルシールのようですが型番は (KOYO−CR MHSA 26 40 5 8) 光洋精製の内径26mm、外形40mm、厚み5mm、幅8mmの単なるバネ入り軸受け用オイルシールです。撤去すると劣化したグリースと錆の混合体が現れました。軸は固着しており、リップやバネのテンションも落ちていて水分が浸入したようです。このような構造部の定番通り、油脂分が落ち易い上側の腐食が激しいです。

 
 構成は上下ともワッシャーとシム、スナップリングですが、各々が錆で固着している状態であり、放置状態からの移動時に無理やり操舵したことからシムは千切れてしまっています。またシャフト自体も腐食があり、、錆の除去と清掃を実施したところ薄く銅の層が出てきましたのでメッキが施されていたようです。最早その効果は全く無い状態となってしまいましたが、今回はあくまで中古部品の現状復帰であること、また今後、定期的に分解整備を行うという前提である程度腐食や錆を除去しました。


 アーム本体には銅のスリーブが打ち込まれており、油脂分保持用の溝とディンプル加工が施されています。メッキ面が先に摩滅した為大きな影響が無いのが幸いですが、傷等が見受けられましたのでクリアランスが過大にならぬよう注意してホーニングを行いました。


 全て清掃のうえで組み立て、グリースを封入後新しいオイルシールを打ち込みます。今回は少し厚いスナップリングの使用によりシムは不要でした。リップの張力もピンピン、動きもスムースです。

 
 キレイに塗装して完成。同時にステアリングダンパーの具合も見ておきます。上記のように固着してしまった場合は復活出来ますが、固着したまま使用を続けると真ん中のピンとボディ側ステーが磨耗しますので早めのメンテナンスが必要です。